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「創価学会」になれなかった「浄土真宗本願寺派」

 自民の歴史的大敗……「自民への逆風」それだけです。
 今回の参議院選挙は、特に民主党がすぐれた政党だから勝利した、ということでないことは誰もが知っています。

 宗祖親鸞聖人は、為政者に近づくことを戒め、「主上・臣下、法に背き義に違し、忿を成し、怨を結ぶ」と痛烈な天皇・権力者批判をしているのは有名な話。
 宗教と、政治とは分離されなければなりません。
 ところが、今回、本願寺派は宗門特別推薦として派内の僧侶を民主党候補として送り込み、当選を果たしました。
 この件について、「衝撃」と言うか「やっぱり」と言うか、中外日報平成19年7月31日号に報じられていました。

「特別推薦」藤谷氏の8万票止まりに衝撃(本願寺派)

本願寺派の特別推薦を受けて比例代表に立候補した民主党新人で山口県岩国市の教蓮寺前住職の藤谷光信氏(70)は、79656票を獲得して当選。
また特別推薦を受けて大阪選挙区に立候補した自民党前職で兵庫県尼崎市の万徳寺前住職の谷川秀善氏(73)も、732175票を獲得して議席を死守。

比例区で8万票も得て当選したのに、なぜか見出しは「衝撃」とあります。
それはなぜでしょうか。

まず、本願寺派が特別推薦した藤谷光信氏とは、どんな人なのでしょう。
選挙用の藤谷光信のホームページがあります。(http://www2.ocn.ne.jp/~hu0517/
 中身は、正直何もない。寺を背景に撮影されたポスターが異様な雰囲気を出しています。もしこれが東京選挙区にでも貼られていたら、「又吉イエス」と同類に見られてしまうのではないかと心配になります。
 
政治理念の項目も、

皆様から大きなご支援をいただきながら今日まで参りました。心から厚くお礼申し上げます。
 私は、これからも「み佛の恵みを喜び、互いにうやまい助けあい、社会のために尽くします。」
 「豊で正直者が損をしない国。
  お年寄りを大切にし、緑のある国。
  よりよい福祉のゆきとどいた差別のない国。」
 そんな国づくりのために、
 「世の中安穏なれ、仏法ひろまれ」の精神を根幹として、たしかな明日の日本のため、日々活動を続けています。

 これだけです。
 具体的な方針やマニフェストも何もありません。おまけに、リンク集1をクリックすると「西本願寺」のホームページへ、リンク集2をクリックすると民主党サイトへ飛びます。リンク集ではありません。
 このような非常にできの悪いサイトを見せられては、本当に選挙を戦う気があったのか疑問です。

 しかし、本願寺派は、この藤谷氏を強力にバックアップし、選挙活動を宗門あげて戦いました。
 それは、本願寺派の機関誌「本願寺新報」の1面を見ても分かります。

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 これが、果たして一仏教宗派の機関誌なのでしょうか?
 まるで「聖教新聞」のようです。

中外日報では、

比例代表で藤谷氏が議席を得たことで同派は33年ぶりに「宗門代表」として僧侶を国会に送り出すことになったが、宗門挙げての支援を受けながら獲得票数が約8万票にとどまったことについて、同派幹部は「厳しい数字。この結果を真摯に受け止め今後に生かしたい」と語っている。

とあり、当選しながらも票が思うように集められなかったことに、大きなショックを受けているようです。

なぜ厳しい数字なのか。

各連絡事務所が集めた藤谷氏の後援会への加入者数を集計すると約18万人。8万票はその5割にも満たない数字で、民主党への追い風が吹かねばどうなっていたか分からない。不二川総長も「宗門の組織力の脆弱さが露呈した」と深刻に受けとめている。

 後援会で18万人の名前を集めておきながら、実際は8万票にも満たず、完全に裏切られてしまった、ということです。
 それにしても、創価学会のように、選挙運動がうまくいくとでも思っていたのでしょうか、幹部は。

 残念ながら、本願寺派の組織力など、「脆弱」ではなく、全く無いのです。
 ただでさえ、寺の建て直しや修理での懇志が思うように集まらなくなっている昨今、選挙の投票先を「お寺の住職さんの言われる通り」と、ほいほい投票する門徒など、いないということです。

 そもそも、西本願寺門徒は自民支持が多く、野党へ投票する習慣があまりないようです。
 おまけに、今回の特別推薦について宗門内ではもめにもめました。
 たとえば、教団ぐるみ選挙に抗議 本願寺派僧侶ら 「私物化」と指摘(しんぶん赤旗)という記事があります。
抗議内容だけ抜粋してみると、

「宗門内の僧侶、門信徒の思想信条・政党支持の自由を侵害する」
「ご門徒から預かった宗門組織を特定の政治的活動に利用するという公益法人の政治的私物化」
「政教一体の批判は免れない」
教団当局が“宗教法人非課税を維持するため国会に人材をおくる”と説明していることについて、特定候補の選挙活動をすれば逆に宗教法人の公益性が疑われ、課税の口実を与えることになる
「政党におもねり、政治権力と結びつくことで宗門の発展がはかれるものではなく、その道は教団の『創価学会化』であり、宗教教団として自滅行為」

とあり、どれも至極もっともな内容ばかりです。

 そもそも真宗教団は、小泉首相の靖国参拝の折には、必ず「政教分離の原則を踏みにじる行為」と抗議文を送っていたのですが、今回の宗門挙げての選挙活動は「政教分離の原則を踏みにじる行為」ではないのでしょうか?
 言っていることと、やっていることが全く違います。

 不二川総長、次の選挙は、どうされますか?
 本願寺派の組織力は、おそらく現状維持すらできないでしょう。

 もっとも、新人候補として70歳の老体しか投入できないようでは、人材不足というより、未来が無いような、そんな予感すらしてきます。
 残念ながら、「創価学会」にはなれないのです。「本願寺派」は。

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